お盆ということで帰省中。
と、言っても僕の故郷は電車で一時間半ほどの埼玉県は羽生市。しょぼくれた小さい町である。
埼玉県民らしく、地元愛が希薄な僕。そんな僕が唯一誇りに思っているのが【松屋のアイス】である。
モア松屋とは!
「モア松屋 有限会社松屋牛乳店」を知らない羽生市民は間違いなくモグリである。
牛乳店、とあるがその神髄は夏季限定で店頭販売されるソフトクリームにある。
僕はこの33年間、この【松屋のアイス】以上のソフトクリームを食べたことがない。
最近よく見かける「クレミア」を食べても、代々木公園の側にある有名店「白一」を食べても、北海道まで行って評判の牧場アイスを食べても、(松屋のほうがうまいな)で終わってしまうのである。
これはもはや呪い。
30年前、松屋にかけられた呪いなのだ。その呪いは思い出補正も相まって今でも僕を縛る。
松屋のアイスを食べにいこう!
今回の帰省の最大の目的、それはこの松屋のアイスである。子供の頃は恐れ多くてできなかった松屋のアイスの大人買い。今、大人になった財力をもってそれを成す。
いざ実食!
寂れた商店街は昼間からすっかりシャッターが閉まっているが、モア松屋は変わらぬ様子でそこにあった。相変わらずレトロな雰囲気だ。
店内はさらにレトロ感があっていい感じだ。
ソフトクリームは昔に比べて値上げしているようだった。まぁそりゃそうか。さっそく注文。
これだ。このソフトクリームが刺さっている台座すら懐かしい。
松屋のアイスはソフトクリームとシャーベットを足して2で割ったようなスッキリとした食感が特徴だ。濃厚なミルク感を味わいつつ、後味はサッパリとしている。やはり…うまい。
上記のような特徴のせいか若干溶けやすく、モタモタしているとコーンの下から溶けたミルクが染み出してくるのはご愛嬌。しかしそのミルクが染みたコーンがまたうまいのだ。
子供の頃はこれで終わっていた。が、今日は違う。ソフトクリームからの……「コーヒー牛乳フロート」の追加注文だ!!
ジョッキ一杯に注がれたコーヒー牛乳の中に、ソフトクリームが底まで沈んでいるのだ。なんということでしょう!
子供がこんなもん頼んだら、お腹を壊すこと必至。ガキはすっこんでな。ここからは大人のステージだ!
妻に「お腹壊さないでよ?」と念を押されながらも1人で完食。腹ァ…タポタポだ…。でも、これで満足したぜ。数年ぶりの松屋のアイス。これで今回の帰省の目的は果たした…(墓参りもまだしていないが)。
その夜…
上げ膳下げ膳でゴロゴロ過ごしていると、母ちゃんの声がした。
「松屋のモナカが冷凍庫に入ってるから食べてね。」
!?
そう、松屋にはソフトクリームだけでなく、お持ち帰りに最適なモナカもあるのだった!
冷凍庫を開けるとそこにはジップロックされた松屋の最中が1、2、3、4、5……10個だと!?
第2ラウンドのゴングが鳴った。
松屋のアイス追記
松屋のアイスは相変わらずうまかった…。だけど何か、うまく言えないが以前と何かが違っている。
若干ではあるが、昔のほうがミルク感が濃厚だった気がするのだ。実際に味が変わったのか、ただの勝手な思い出補正で昔のほうがおいしく感じられているだけなのか、はたまた自分が大人になってしまったからなのか……。
少し寂しい気もするが、でもまぁそれはそれでいいと思う。変わらないものなどないのだ。
僕は少しずつ、30年来の呪いが解けていくのを感じた。